母と、ちいさな編みこみ
小学生の頃の写真を見ると
私の髪型は決まってみつあみのおさげだった。
毎朝、母がパパッと手際よく
そしてきっちりと編みこんでくれた。
あまりにもきっちりと編みこむので
頭皮が引っ張られて痛いのだけれど
完成すると、どんなにお外で走り回っても
丸一日崩れない完璧なみつあみだった。
あさ7時に目が覚めると、
母は既に起きていて、鏡台に座ってお化粧する後姿が見えた。
私がテーブルについてボーっと寝ぼけていると、
いつの間にか朝ごはんが私の前に出来上がっている。
ロールパンをほおばりながら、半分ウトウトする私。
おそらくその間も、母は会社に行く準備をしていたのだとおもう。
パタパタと動き回る気配を感じていたことだけ覚えている。
私がのそのそと服を選んで着替え、大体決まった時間になると
母は私の後ろに座り、柄の長い竹の櫛で髪を真ん中で二つに分け、
ぎゅっ、ぎゅっと編みこんでいく。
小さなスイカやバナナの飾りがついたゴムで縛ってくれる。
いつものまりちゃんの髪型が完成する。
ランドセルを背負って、いってきますとあいさつをすると
母は毎朝必ず私が見えなくなるまで窓から手を振ってくれた。
大きなランドセルを背負った私は
母が遠く小さくなるまで、何度も振り返り、母に大きく手を振った。
日ごろ無口で不器用な母の、愛情表現の一つである。
0コメント