母と自転車

私の母の交通手段は、自転車だった。 

 仕事へ行く時、私を病院へ連れて行く時 

 もちろん会社帰りによるスーパーへ行く時も 

 白い買い物袋に夕飯の材料と

 私のためのお菓子を一つ詰めて 自転車カゴに乗せて走る。


 保育園の頃、私はいつも母の自転車の後ろに乗せられていた。 

いつも母の白いシフォンブラウスに風が入って 

 風船のように背中が膨らんでいた。

 多分結構な勢いで漕いでいたんじゃなかろうか。

 私はそんな母の後ろでじっと座って 流れる景色や、

母の後姿を観察して 色んなことを感じていたんだと思う。 


 ある休日、あれは確か小学校低学年の頃

 お昼ご飯を買いに行こうとなって いつものごとく母の自転車の後ろに乗った。

 母もまたいつものごとく、自転車を颯爽と漕いだ。

 ファーストフード店でお決まりのチーズバーガーを買い 

 さぁ帰って食べましょうと自転車に再び乗り込む。 

 そして母の背中から景色を観察する私が あるものをみつけてしまった。

 歩道に並ぶ、車進入禁止用のポールだ。 

 等間隔に私の隣を通り過ぎてゆくこのポールが、気になる。 

 チビの無謀な挑戦の始まりである。 


 ブランコに乗っているときに 「思いっきり漕いだら、目の前の柵を飛び越えられるのではないか」 

出来る気がする、というパターンのあれである。 


 自転車の後ろで思いっきり足を上に上げたら あのポールを越えられるのではないか 

 やるのか、やってみるのか、、、、えい!

 意を決して右足を思いっきり上げ、ポールを越えようとした。 

 そして見事に右足はポールに引っかかり 

 自転車は母と共に前進し続け 私はスポーンと自転車から落ちたのであった。 

 あまりに自然にポールにひっかかったので、 母は後ろの人(私)がいなくなったことに気付いていない。

 (一瞬のことだったけれど、まるでスローモーションのようだった)

 一方道に巣からぽとりと落ちてしまった小鳥のように ポツリと地面に落ちている私に 

周囲の通行人が「ん?大丈夫??」と集まってきて、人の輪ができた。 

 痛いのに、沢山の人に見られてしまって恥ずかしくて泣けない。。。

 助けて、ママ! 


 異変に気付いた母は後ろにわが子がいないことに気付き 急いで私を回収しにきてくれたのであった。 

 そして私はお家に帰ってからえ~んと泣いたのであった。


 子供の無謀なチャレンジ精神に 母もさぞかし驚いたことだろう。   

Joy The Earth

アランコーエン認定   ホリスティックライフコーチング・ 行き詰まりや迷いを解消し リラックスして夢を叶えるためのコーチング・本質開花・直感力up

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